トスカーナ風イノシシ肉の煮込み・そして臭みを取るコツを紹介します。

 


秋が深まってきたトスカーナ州では、狩猟の季節がやってきました。

昔から、イノシシやシカなど野生の鳥獣を食べてきたことから、今でも趣味で狩猟をする人を多く見かけます。


この時期は、レストランや家庭でイノシシ料理が食卓に上がるのがフィレンツェの秋の風物詩です。

イタリアの狩猟、各家庭にあるイノシシ肉の臭みを取るコツやジビエ料理とイタリアの食文化について紹介します。



狩猟の解禁日



イタリア全土で狩猟が解禁されるのは毎年、9月の第3日曜日です。

狩猟が出来る期間は、9月の第3日曜日から131日までの約4カ月間です。


イタリアには約54万人(2017年のデータ)の猟師が登録されています。

トスカーナ州には、73千人の猟師が登録されていて、イタリア全州で1番猟師の数が多いです。

 

トスカーナ州の猟師の数を見てわかるように、トスカーナ州は狩猟が盛んです。

狩猟をするには、日本と同様に免許証が必要です。いのししの狩猟が始まるのは101日です。

そのように狩猟する野生動物によって、期間や捕獲数などが細かく州によって決められています。

 


イノシシ肉の料理



トスカーナのイノシシの肉を使用した料理の定番といえば、「イノシシ肉のラグー」と「イノシシ肉の煮込み」ではないでしょうか。


イノシシ肉のラグーは、平打ち卵入りパスタ・パッパルデッラとよく合わせてトスカーナ州では食べられます。

「イノシシ肉の煮込み」は、イノシシ肉を香味野菜、ハーブ、赤ワイン、トマトペースト、オリーブの実などと一緒に煮込んだ料理です。




筆者の義理の母・クリスティーナは料理上手


クリスティーナが作る料理はどれも美味しいけれど、その中でも「イノシシ肉の煮込み」は、秋冬の定番のご馳走です。

 

クリスティーナのイノシシ肉の煮込みは、シンプルに「イノシシの肉の味」がします。

レストランや友人の家で食べたイノシシ肉の煮込みは、香辛料が強かったり、下処理が足りず獣臭さが残っていたり、なかなか美味しいとは思えませんでした。

そこで、クリスティーナにイノシシ肉の煮込み作りのコツを聞いてみました。

 

イノシシ肉の煮込みのコツは、下処理とハーブの使い方にあります。

下処理は次の章で紹介するとして、ここではハーブの使い方を紹介します。

 

ハーブの種類によって、生または乾燥で使用した方がそのハーブの特性を最大限に料理に活かすことが出来ます。


クリスティーナがイノシシ肉の煮込みで使用するハーブは、どれも乾燥ハーブです。

例えば、ローズマリー、セージ、タイム、ビャクシン、月桂樹の葉などです。

どのハーブも「煮込み料理」に適したハーブです。

 

クリスティーナは、一般的なイノシシ肉の煮込みのレシピのハーブの量に対して、気持ち少なめに乾燥ハーブ使用します。

なぜなら、イノシシ肉に丁寧に下処理がしてあれば、大量のハーブ使用して獣臭さを消す必要がないからです。

また、イノシシ肉のそのもの味を活かすには、少しのハーブで足りるからです。

 

「イノシシ肉の煮込み」を作る時のコツは、乾燥ハーブを使用する事と下処理を丁寧にする事にありました。



イノシシ肉の獣臭さを取る下処理

 

●イノシシ肉の下処理の秘密は「水」にあり!

 

イノシシ肉の臭みの原因となる血を水で洗い流し、イノシシ肉を水につけて冷蔵庫で放置することによって、イノシシ肉を柔らかくする方法を紹介します。

 

イノシシ肉の筋や余分な脂を取り除き、一口大に切ります。その肉を水を変えながら、数回洗います。

密封容器に水とイノシシ肉を入れて冷蔵庫で一晩置きます。

水に一晩つけることによって、イノシシの獣臭さを和らげて、イノシシの肉を柔らかくするんだそうです。

 

イタリアでも日本でも、ワインの酸性を利用したシビエの肉の下処理がよく知られています。

以前は、クリスティーナもワインでイノシシ肉の下処理をしていました。

しかし、ワインでイノシシ肉の下処理をして、またその肉をワインで煮込むと、ワインの苦味がイノシシの野生味を強く表に出してしまうので、ワインで下処理するのをやめました。

 


そして何十年前に、イノシシ料理の上手なおばあちゃんから、水を使用したイノシシの肉の下処理を教えてもらったそうです。

おばあちゃんの知恵は、万国共通です。

 

 


その他のイノシシ肉の下処理の方法


●「ワイン」を使用した下処理

 

イノシシ肉の下処理によく使われるのが、赤ワインをベースにしたマリネ液です。

ワインに含まれる酸によって、イノシシ肉を柔らかくする方法です。

 

イノシシ肉の筋や余分な脂を取り除き、一口大に切ります。

イノシシ肉、赤ワイン、香味野菜、グローブをガラスの密封容器入れて、最低12時間冷蔵庫でマリネします。

赤ワインの量は、イノシシ肉1キロに対して赤ワイン1リットルを使用します。

 

 

 

 

●「酢」を使用した下処理



酢を使用した下処理は、イノシシ肉を甘酸っぱい味に仕上げる料理に向いています。

酢に含まれる酸によって肉がやわらかくなり、また獣臭さを和らげてくれる効果があります。

 

イノシシ肉の筋や余分な脂を取り除き、一口大に切ります。

イノシシ肉、酢、タイム、ローズマリー、グローブ、胡椒と砂糖を密封容器に入れて、最低12時間冷蔵に放置します。

酢の量は、イノシシ肉1キロに対して200mlの酢を使用します。

 

 

 

 

●「牛乳」を使用した下処理



牛乳には硬い肉に多く含まれるタンパク質を、分解する酵素があります。

そのため牛乳にイノシシ肉を数時間つけると、イノシシ肉が柔らかくなり、牛乳に含まれるタンパク質や脂肪質が、イノシシ肉の獣臭さを取る効果があります。

その牛乳の効果を利用した下処理は、イノシシ肉を使用したどんな料理にも向いています。

 

イノシシ肉の筋や余分な脂を取り除き、一口大に切ります。その肉を牛乳につけて冷蔵庫に一晩おきます。

牛乳に一晩つけることによって、イノシシの獣臭さをやわらげて、イノシシの肉を柔らかくするんだそうです。

 

 

ジビエ料理とイタリアの食文化





日本では、食用を目的とした狩猟で取れた野生の鳥獣を意味するフランス語の「ジビエ」が使われています。

イタリア語では「セルヴァッジーナ」といいます。

 

昔からイノシシを含む野生の鳥獣は、イタリア全土で食べられてきました。

特に、トスカーナ州、ウンブリア州、サルデーニャ州には、豊富なイノシシ料理のレシピが残っています。

 

近年、イタリアも日本と同様にシカやイノシシの増殖が問題になっています。

その問題をジビエの肉の栄養価や味を再評価して、地域の人々にジビエ肉を食べてもらい、ジビエに関わる自然環境の保護に関心を持ってもらうプロジェクトがありました。

 

そのプロジェクトは「selvatici e buoni セルヴァーティチ・エ・ヴォーニ」です。

Una ウナ」財団のプロジェクトのひとつです。

https://www.selvaticiebuoni.it/


Una ウナ」財団は、新しい自然の管理の文化をイタリアに作り上げる為に創設されました(Unaは、イタリア語のuomo 人、 natura 自然、 ambiente 環境の頭文字を取って作られた造語です)。

 

selvatici e buoni セルヴァーティチ・エ・ヴォーニ」は、素晴らしい栄養面と味の面において過小評価されてきた「野生の鳥獣の肉」を評価するために立ち上げられた計画です。

 

セルヴァーティチ・エ・ヴォーニの活動の中に、北イタリア・ベルガモでレストランの経営者に向けて、野生の鳥獣の肉の料理を紹介する活動がありました。

地域の食材と合わせたジビエ料理をお店で提供することによって、ジビエの伝統料理を再評価し、また自然環境に配慮した料理をその地域の人々に味わってもらうことが出来ます。

 

イタリアらしい、「料理」という切り口から他分野にわたりジビエに関わる問題を解決しようとする動きを紹介しました。

 

 

まとめ

狩猟の解禁とともにトスカーナ州に秋が訪れます。猟師数No.1のトスカーナ州には、各家庭に豊富なイノシシ料理のレシピがあります。今回は、料理上手なクリスティーナのイノシシ肉の臭みを取るのコツを紹介しました。

そして、長いジビエの食文化が残るイタリアならではのジビエに関わる問題を解決するプロジェクトを取り上げました。

 

参考元

https://www.regione.toscana.it/documents/10180/11802128/CALENDARIO+VENATORIO+110822.pdf/3fd5650d-a20c-b00c-fd47-7bda279c7a4e?t=1660196348473

https://www.armietiro.it/il-numero-vero-dei-cacciatori-10404

https://www.selvaticiebuoni.it/il-progetto

https://www.j-milk.jp/findnew/hk8j0u000000053t-att/gyunyu_nyuseihin.pdf