イタリア現地リポート:物価高について

イタリアでの生活インフラ 4人家族一世帯あたりの生活費 年間1400ユ-ロアップと推定



224日、「ロシアがウクライナに攻撃を開始した。」という耳を疑う驚愕の事態が発生した日です。

平凡な毎日を過ごす私たちにとって、戦争は繰り返さることのない遠い過去の歴史になっていたのではないでしょうか。

爆破された建物、瓦礫の中を徘徊している人達や防空壕に避難している人達の様子、更には道端に転がっている死体などの衝撃的な映像がこちら現地のニュースで毎日流れています。


EU(ヨーロッパ共同体)諸国ではウクライナの避難民を受け入れていて、その数EU全体で250万人、イタリアではおよそ92000人(4月時点で)を受け入れています。


ようやくコロナ不況から立ち直ろうとしている矢先の悲劇で、戦争と直面している人達にとって明日のことだけ考えて生きている状況と比べれば、私たちの生活がこの戦争の勃発によって更に厳しくなったことは比較対象にならないかもしれません。

しかし、今回の戦争が起きたことによる急激な物価高騰は思いがけない不幸としか言いようがありません。


ロシアのウクライナ侵略でEUはロシアの経済制御に乗り出しましたが、イタリアは天然ガスの供給の約50%をロシアに頼っており(ドイツも同じ状況)一概に「ガス要りません。」と言えない状況。

この問題を回避するために、DORAGHI首相はアルジェリアからの天然ガスの供給拡大の合意を取り付け、他にも近隣アフリカ諸国(アンゴラ、コンゴ、モザンビークなど)とも話し合いを進めているようです。


深刻な物価高騰で一番私たちの生活に打撃を与えているのは、ガス、電気、そしてガソリン代といった燃料費。


イタリア全国消費組合(UNIONE NAZIONALE CONSUMATORI)は、2022年度は前年に比べ4人家族一世帯当たり年間1400EUROの生活費アップを推定しているという記事がありました。


食品については同組合が、価格アップ率が高い食品項目を1位から10位まで発表したデータ―も掲載しています。今回は、現地リポ-トとして現在イタリアではどのくらい物価が高騰しているかに焦点を当てた内容でお届けします。



ウクライナ戦争勃発時は、ガソリン1リットル当たり2ユ-ロ越え。



(1L=1.81ユーロに高騰し、現在はさらに2.2ユーロ=約300円)


ガソリン代は、ウクライナ戦争前から高騰していました。


その原因は色々あるのでしょうが、中国やインドなどの新興国の需要が増えたこと、EU諸国で消費される原油は北海ブレンドで採掘されるものですが、2021年に過去3年間で初めて1バレル=80ドルを突破したことが大きいとされています。


そのような状況で、戦争前でガソリン1リットル当たり1.56-1.58EURO(最近の外国為替相場 仲値135.5136/EURO)前後でしたが、戦争開始直後はなんと2.20-2.30EUROぐらいまで一気に跳ね上がりました。


イタリアは車社会です。公共交通機関を利用した通勤通学も大都市では、度々ストライキが起こるリスクはあるものの可能ですが地方ではまだまだ難しいと思います。


また、中学生までの子供たちは保護者の送迎が義務付けされているので登校、下校時間帯は送迎する車のラッシュアワーです。買い物へ行くにもやはり車。


共働きが一般的なイタリアでは、大きいカ-ト一杯になる1週間分の食料や日用品をまとめ買いする家庭が殆どです。


車やバイクを2台所有する家も珍しい事ではなく、日本に比べると自転車やバスを利用した移動が少ないような気がします。ということで、このガソリン代の高騰は一般家庭の生活スタイルを考えるとかなりの痛手なのです。


以前、私達の住む地域ではスイスとの国境が近く「CARTA SCONTO」というガソリン代ディスカウントカードが市役所で所有車両を登録申請して発行されるカ-ドがありました。


スイスのガソリン代の方が安いので国境付近の住人がスイスで給油する事態を回避するために、スイスの値段と同等のディスカウントがイタリアのガソリンスタンド(CARTA SCONTO利用可と表示された)で適応されるカードでしたが、数年前から廃止されてしまいました。



最近主要駅前で見かける公共のカーシェアリング、レンタル自転車や電動キックボ-ド。ビジネスマン、ビジネスウ-マンの電動キックボ-ドの利用が目立つ



ミラノなどのビジネス街で数年前から良く見かけるようになったのが、国鉄や地下鉄の駅に停車されている公共のレンタル自転車や電動キックボ-ドで出勤する光景。


専用アプリを携帯にダウンロードして使用可能な自転車やキックボ-ドを予約でき、利用時間によってあらかじめ登録してあるクレジットカードなどでの自動決済が可能なようです。


ガソリン代高騰のためか以前は学生などの若者達の利用が目立っていましたが、最近はスーツ姿のビジネスマン、ビジネスウーマンも見かけます。


また、カーシェアリングの利用も増えている気がします。

車両保険、自動車税などの支払いがなく使用時間や走行距離で料金を支払うシステムで、ガソリンは利用者が給油するのが一般的で走行近辺にある提携ガソリンスタンドがアプリから検索でき、ガソリン代分の無料走行やレンタル料支払いに利用できるバウチャーが発行されるとのこと。



自家用車2台所有から1台分はカ―シェアリングで補うことが出来れば、ガソリン代も余分な維持費も削減できますよね。


通常、キーは車内に置いてあり車のドアの解除は携帯にダウンロードしたカーシェアリング会社のアプリから操作するとあります。機会があれば、利用してみたいです。


電気代は55%、ガス代は41.8%アップ。政府は戦争による緊急事態で価格制御の特例を発令



深刻な物価高騰のナンバーワンは、やはり生活に欠かせない電気とガス。


イタリアは日本同様資源に乏しい国であるため、他国に依存しています。

電力の50%はスイスからで30%がフランス、残りはスロベニアやオーストリアからの供給です。


ガスに至っては、50%以上がロシアからの供給だったために前述のとおり対策として、アルジェリアからの供給拡大やその他の近隣アフリカ諸国からの供給を話し合っているとのこと。


戦争が始まった当初はまだ寒い時期で、「これから暖房がつかないかもしれない。」と世間で噂になったりしました。


イタリアで一般的な暖房器具は、各部屋の壁に設置されているラジエター式ヒータ-で「TERMOSIFONEテルモシフォ-ネ」、「RISCARDAMENTOリスカルダメント」と呼ばれ、ガスで加熱した温水が通されて部屋を暖めるシステムです。


毎年、各市でその年の天候気温を考慮して暖房開始終了時期を決定します。


一戸建ての家や自宅で暖房を入れる時間を調節できるアパ-トやコンドミニアムもありますが、我が家のコンドミニアムのように建物全体で定期的に午前中、深夜の一定時間帯に自動的に止まるシステムもあります。


節約できるとしたら、各ラジエターの温度強度のバルブを最小の1にしたり日当たりのよい部屋はゼロにすることです。


それでも、暖房が入っている時期は10月中旬くらいから4月中旬で(地域差があると思いますが。)ほぼ半年という長い期間なので暖房費はかなりかかります。



ポストコロナで企業がスマートワ-キングを導入するようになり、出社が週5日から週23日になった人も増えています。


自宅で過ごす時間が長くなったことで光熱費がかさむという理由からスマートワ-キング導入には賛否両論あるようです。


低所得者家庭では、急激に高騰した電気代とガス代が支払えないケ-スが問題となり政府は、省庁評議会で318日に「DECRETO TAGLIA PREZZI」という価格制御法令を承認し518日に可決されました。


  • 7月までガソリン1リットル当たり30.5セントの値下げ
  • 520万世帯を対象に電気、ガス代を前年夏と同額の支払いにする

など、またBONUS CARIBURANTE2022という燃料費200EUROのバウチャーを発行するとありますが、私はまだ実際にこのバウチャーを使用している人を見かけたことがありません。



全国消費組合が発表した値上げ率が高い食品トップ10



燃料サーチャージの値上がりやウクライナからの輸入食料品も多いイタリア。一時は、スーパ-マ-ケットで「小麦粉お一人様5袋まで」、「ひまわり油お一人様3個まで」など特定の商品に購入制限が出され「今のうち少し余分に買った方がいいのかな。」と不安になる事もありました。


UNIONE NAZIONALE CONSUMATORI(全国消費組合)4月時点で「値上げ率(前年比)食品トップ10」として以下のように発表しています。


1位 油(オリ-ブ油は異なる)23.3

2位 生鮮野菜 17.8

3位 バタ― 17.4

4位 パスタ(生麺、乾麺)13

5位 シ-フ-ド(生鮮、冷凍)10.8

6位 小麦粉 10

7位 鶏肉 8.4

8位 果物(生鮮、冷凍) 8.1

9位 魚(生鮮、冷凍)7.6

10位 ジェラート 6.2


値上げ率6%弱に、ひき肉、ソ-セ-ジ、サラミ、パン、牛乳、砂糖、ジュ-スなどが続きます。


実感として生鮮野菜は高くなったと思いますが、全体的に少しだけ割高感はあるもののガソリン、電気、ガスに比べればそれほど急激な値上がりを感じていません。


ス-パーが定期的に行う「SOTTO COSTO(底値売り)」や前回の購入金額で発行されるディスカウントバウチャーがあり、もしかしたらそのような販売戦略に惑わされて気づいてないだけかもしれませんが!


EU諸国の中では、イタリアは低所得の国でありこの急激な物価高騰でギリギリの生活を迫られている世帯も沢山存在するのは事実です。


それでも51日より特別な制限がない限りグリーンパス(コロナ予防接種証明書、またはPCR検査陰性証明書)の提示も無くなり、マスクをつけることも義務付けでなくなりました。


開放的になった今、国内の夏のバカンスとして人気のあるプ-リア州やサルデーニャ州、リミニなどの宿泊施設の予約は既にほぼ満室で、ようやく活気のある夏が戻ってくるというニュースが流れていましたよ。


「毎日の生活で不安要素は沢山あるけど、今を楽しみたい!」というイタリア人の陽気でプラス思考?な国民性を感じました。